2017年12月10日

中野京子「怖い絵」

 今年の秋は、本書を基にした「怖い絵」展と「運慶」展が一大ブームになった。私は「怖い絵」展には当初興味がなかったが、ラジオで著者の中野京子さんがゲスト出演して、「怖い絵」展開催の趣旨をお聞きし、俄然興味を持って本書を購入した。実際に本書を読んでみて、怖いと感じる絵は「我が子を喰らうサトゥルヌス」ぐらいで、背筋が寒くなるような恐怖を感じる絵はなかった。しかし、間違いなくおもしろい。

 著者の絵画を見る視線は図像学的知識ともまた違う。もちろん、それは踏まえてのことだが、もっと作者の生い立ちやその時代背景に肉薄してストーリーを紡ぎ出している。私は「人麻呂の暗号」を読んだ時のような豊かなイマジネーションを感じた。何より著者が恐怖の源は何かを考察しているところに深さを感じる。著者によれば、恐怖の源は「死」と精神の死ともいうべき「狂気」であると言う。人間にとって、最大の未知は死である。しかし、生きている人間にとって、これほど怖いもの見たさを感じる対象もない。故に「怖い絵」は魅力的に感じると著者は言う。その深い洞察に脱帽。
posted by asami3 at 11:04| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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